アニマルアロマセラピー10箇条

 

 

伴侶動物のために,これだけは知っておいていただきたい最重要事項です.

 

 

1)ネコ,フェレット,小型のエキゾチックペット,小鳥,爬虫類,両生類,魚類に精油を使うことは非常に危険です.

 

2)自分の飼っている動物が病気ではないかと思った場合,まずは動物病院で診察を受けましょう. 

  

診断された時点で,主治医と相談しながらアロマセラピー を上手に取り入れます.

事前に精油を使用している場合には,そのことを主治医に伝えておきましょう.薬剤による治療をする際に精油を使用すると,相互作用で薬効が強くなったり弱くなったりするので,十分な注意が必要です.

 

3)自分の飼っている動物の,体温や呼吸数などの正常状態は常に把握しておきましょう.

  

動物病院を受診すると,緊張のため,心拍数は増加し,体温もいつもより高めになってしまうことがあります.体温計を使わなくても,日常的に耳の内耳,内股(鼠蹊部,そけいぶ)などで,健康時の体温を感じることが出来ます.呼吸数は胸部の動きを見て,心拍数は手のひらを左胸の心臓に当て,鼓動を数えることで把握できます.心臓の機能が正常に機能しているかどうかは,毛細血管再充満時間(CapillaryRefill Time, CRT)を見ることで判断できます.毛細血管再充満時間とは,歯肉を指で押すと白くなりますが,元のピンク色に戻るまでの時間のこと.2秒未満であればまず問題ありませんが,なかなか戻らない場合は循環不全を起こしていると推測されます.アロマセラピー を行う前に,これらのことに気を配っておきましょう.

 

*体温 : イヌ・ネコとも37.5~39.2℃  

 

*呼吸数 : 小型犬20~30回/min,大型犬 約15回/min,ネコ20~30回/min

 

*心拍数 : 小型犬90~140回/min,大型犬60~100回/min ,ネコ140~250回/min

 

4)処置の前後には,手洗い励行.

  

普通の石鹸をよく泡だて,流水下で10秒以上流しましょう.ヒトと動物の共通感染症の予防にもなります.

 

5)良質の精油を用いること.有効期限内であっても,変色したり異臭のするオイルは使用しないこと.可能な限り,安全データのある精油を用いると,精油による事故の予防や,万一の法的な問題にも対処しやすくなります.(Plant Aromatics ; Martin Watt 著参照)

 

6)必ずパッチテストを行うこと.

  

遅延型のアレルギー反応の判定は72時間後でありますが,通常のブレンドは濃度が高くないので,一般的には15~20分程度の観察で,異常が出ないことを確かめれば問題ありません.アトピー体質の動物では,安全を最優先するために,72時間観察する必要があります.

 

7)4週齢の子犬には,アロマセラピー は実施しないように.出来れば8週齢までは極力控えましょう.

新生児の肝臓の代謝酵素は不完全で,ネコと同様に精油成分の代謝が上手にできません.

 

8)妊娠中は胎子への影響を考え,授乳中は新生子への影響を考え,極力アロマセラピー を控えましょう.薬物(または精油)は,血流や母乳を通して子供に移行します.

 

9)万が一目に入った場合は,物理的に微温湯で洗い流し,純正の植物油(コーン油が一番刺激が少ないと言われる)で希釈を試み,症状が改善されない場合は直ちに動物病院を受診しましょう.

 

10)アロマセラピー は,必要最小限(濃度,頻度,期間)にとどめること.

  

動物特有の匂いを消すためや香水がわりに,連日長期使用していると,毒性や感作性が発現する危険があります.皮膚や腸管では,正常細菌叢のバランスが崩れ,肝臓では酵素誘導や阻害が起こり,肝障害を起こす可能性があります.

  

合成香料が雄のネズミの繁殖力を低下させるという報告があり,欧州では香水の使用に対する注意報が出ています.

  

また,アロマ製品は,精油,ハイドロゾルにかかわらず,決して動物に飲ませないでください.

  

さらに,G.chamomileなどでは,創傷の治癒を促進する作用が学術的に報告されており,深い刺傷/切傷に精油を使うと,表面の傷が先に癒えて,中でガス壊疽(例:Clostridium tetaniPasteurella multocidaなど)の原因菌などが繁殖する場合があるので,深い創傷にアロマセラピー を行ってはなりません.